■世界の注目をアルザスに向けさせた男
ワインのプロたちが今1番注目しているワイン産地、アルザス。その理由は「マルセル・ダイスがいるから」。
なんとたった1人の醸造家の存在によって、世界中のワインのプロ達がアルザスから目が離せなくなっているんです。
ワイン業界に最も影響を与える評論家ロバート・パーカーさんが大絶賛し、ワインの本場フランスで最も権威あるワイン評価本「レ・メイユール・ヴァン・ド・フランス(クラスマン)」も最高の3つ星評価を献上するドメーヌ・マルセル・ダイス。
アルザスのトップに立つのはもちろんのこと、世界という舞台に立ってもトップクラスの醸造家ですから名前を聞いたことがある方も多いでしょう。
でも、いったいマルセル・ダイスの何がすごいのか?
そう聞かれると首を傾げてしまう方もいらっしゃいますよね。
実はマルセル・ダイスは、フランスのワイン法までも変えてしまうほどのすごい造り手なんです!
■美味しすぎて認めざるを得ない!
ダイスさんによって法律を変えられるまでのアルザスといえば、ぶどうはブレンドせず1種類だけで、すっきり爽やかなワインが造られる産地でした。最優先されるのはぶどう品種の個性だったんです。
つまり、リースリングというワインを造るならリースリングらしさが大事。ゲヴュルツトラミネールという品種を使うなら、誰もがゲヴュルツトラミネールらしいと思えるワインを造るのが良いこととされてきていました。
そのため、ラベルに表記されるのはぶどう品種名で、造った畑の名前はぶどう品種より大きくしてはいけないという注意付き。
ところがダイスさんが1番大切にしたのは、アルザス特有の土地の味。もともとその土地に植わっていたぶどうを流行りの品種に植え替えるなんて言語道断!昔からその土地に適しているぶどうを使ってこその土地の味という考え方です。
こういった理由から、彼のワインは基本が『混植混醸』で、ひとつに畑に様々な種類のぶどうが実っているんです。
「アルザスというワイン産地は、フランスでも最も複雑に土壌が入り組んだ土地。せっかく多種類の土壌が存在するのに、それを無視して何がアルザスワインだ」
そんな考えのもと「アルザスはぶどう品種の個性を大事にするべきだ」という法律に真っ向から立ち向かい、ダイスさんは理念を貫いてワインを造り続けているわけですね。
もちろん、法律に異を唱えるダイスさんに対して、批判や中傷も少なくありませんでした。それまで土地の個性を無視してぶどう品種の名前を掲げることだけに躍起になっていたまわりの生産者や、型を変えることを良しとしないワイン関係者からすれば、今までやってきたことを否定することになりますからその気持ちも仕方ないことです。
でも、そんな批判をモノともせずひたすら自分の信じる道を突き進んだダイスさんのワインはどれもあまりに素晴らしく、誰もが認めざるを得ないほどの美味しさだったんです。
そしてついにはダイスさんを認めて、法律も改正されました!
それまでラベルに1番大きくぶどう品種を記載しなければいけなかったのに対して、「土地の個性を大切にするべき」というダイスさんに習って品種名よりも畑名を大きく表示するよう改正された上に、ぶどう品種は記載しなくても許されるまでに……。
たった一人、誹謗中傷にも負けずに理念を貫き通したダイスさんが、法律までも変えたというわけです!
その後も限られた一部の畑では、単一のぶどう品種だけではなく複数のぶどう品種をブレンドしても、グラン・クリュと名乗れるように法律を変更。現在は『アルザス・プルミエ・クリュ(畑名表記)』の実現をフランスの原産地呼称委員会(INAO)に対して訴えかけています。
このプルミエ・クリュに関しても当初は反対派が多かったものの、近年他のアルザスの生産者に対しての説得を完了し、遂に『アルザス村の総意として』INAOへのアピールを開始すると、ダイスさんの息子であり次期当主のマチュー・ダイスさんから報告を受けたのは2013年のこと。『Appellation Alsace 1er Cru Controlee(アペラシオ・アルザス・プルミエ・クリュ・コントローレ)』というラベルを見るのも、遠い未来の話ではないのかもしれませんね。
■常識を覆す、衝撃的な美味しさ
マルセル・ダイスのすごさは、何と言っても出来上がるワインの美味しさ!
私も2004年にマルセル・ダイスのドメーヌにて初めて飲んだときの衝撃を、今でも忘れることができません。あまりの美味しさに言葉を失い、それまでの常識がいっきに崩れていきました。
グラスに注いだ瞬間、トロピカルフルーツやハチミツの濃厚な香りが溢れ出し、一瞬でテーブル中が柔らかな香りに包まれます。グラスを動かすとトロリとしたワインに仕上がっていてビックリ。冷涼な気候のアルザスでどうやったらこれほど濃厚なワインができるんでしょう!? まるでムルソーやピュリニー・モンラッシェのように芳醇な香りを持ったワインができるなんて、本当に驚きました。
濃厚なフルーツの香りの奥からはアルザスらしい杏や熟したグレープフルーツの香りが顔を見せ、グラスを手に持つたびに万華鏡のように表情を変えて心をわしづかみにしてくれます。香りを楽しんでいるだけで時間が経つのを忘れてしまいますよ。
香りにウットリしながらワインを口に含めば、様々なフルーツの風味が次々と弾けて一気に広がります。もちろんアルザスの持ち味である酸味は、一点の曇りもないほど瑞々しく清らかです。さらにミネラルをたっぷり含んだワインは驚くほど深い味わいがあるんです!
様々なぶどうの混醸にて造られているおかげで、フルーツだけでもレモンだったり、トロピカルフルーツだったりと、いろいろな風味が口の中を漂います。しかも、こんなにも複雑なのに全てが絶妙なバランスで絡まりあっていて、このバランスは「完璧」というほか言葉が思いつきません!
1ミリのブレも感じさせない完璧な美味しさは、まさに衝撃的! 一口、また一口と飲むたびに、どんどんマルセル・ダイスの魅力にひきこまれるのが実感できます。
時間が経つと共に、まるで風船を膨らませたかのようにどんどんと風味が膨らんでいくマルセル・ダイスのワインは、ぜひ大きなグラスで飲んでみてください。ワインがたっぷりと空気と触れ合うことでボリュームが何倍にも膨れ上がり、あっという間に何とも言えない絶妙な心地よさに包まれますよ。
■次期当主の加入により更なる高みへ
ここ数年のドメーヌ・マルセル・ダイスにおいて最も大きな出来事が、2007年の次期当主であるマチュー・ダイスの正式加入です。
初めてマチュー・ダイスさんにお会いしたのは、彼の初来日となった2013年5月のこと。その時に行われたセミナーの会場で「栽培はまだまだ父親に追いつけませんが、醸造に関しては間違いなく彼を超えています!」と断言していた姿が印象に残っています。
2006年までのマルセル・ダイスはテロワールを重視した『畑のワイン』であり、その味わいはテロワールからくる滋味深さが満ち溢れ、とてもボリューミーで高貴なスタイルでした。
しかしマチューさんが加わった2007年以降のダイスには、その従来の味わいに醸造のテクニックが加わり、ワインの骨格の力強さが今まで以上に表れています。
父親が畑(栽培)で造る『高貴でボリューム感のある果実味』に、息子がドメーヌ(醸造)で『洗練された酸味と骨格』をプラスし、世界最高峰のワインと名高いマルセル・ダイスを更なる高みへと押し上げていると言っても過言ではありません。
親子が織り成す素敵な化学反応、そしてその進化はこれからも目が離せませんね。
■アルザスにも格付けによるカテゴリー分けを!
現在マルセル・ダイスでは、アルザスのワインにも「ブルゴーニュ同様のカテゴリーを作るべきだ」という動きが起きています。
「世界中どこのレストランに行っても、ブルゴーニュは地方名、村名、畑名、グラン・クリュとカテゴリーが細分化されているのに対し、アルザスは地方名のみでラインナップが少ない。アルザスだってテロワールを上手に表現すれば同様のカテゴリーは生まれる!」というのが彼らの考え方です。
この動きによりマルセル・ダイスでは既にこのカテゴリー分けによるワインのリリースが始まっており、イーエックス・ワインでも今後はこのカテゴリーに基づいてダイスのワインをご紹介させて頂きたいと思っています。
例えば、マルセル・ダイスのワインでこれを説明すると、下記のようになるわけです。
ブルゴーニュ(地方名)=ヴァン・ダルザス
ジュヴレ・シャンベルタン(村名)=ベルケム
ジュヴレ・シャンベルタン・1re Cru(畑名)=ショフウェグ
シャンベルタン(グラン・クリュ)=シュネンブルグ
アルザス地方はその独特の地層により多種多様なスタイルのワインが生み出される産地です。このカテゴリーがあれば、そんな多種多様なワインたちを幅広くご紹介することが可能になりますし、何よりも味わいや価格帯の幅も広がりますから、世界中の多くのワイン愛飲家の方に楽しんで頂けるはずと強く実感しております。
■新登場!マチュー・ダイスによる「自由と革新」のワイン
マルセル・ダイスの醸造を担当しているマチュー・ダイスさんが、伯父の畑を継承し、ダイスの醸造所で造る「ヴィニョブル・デュ・レヴール(夢見る者のぶどう畑)」のワインが登場です!
マチューさんの感性と確かな技術の融合により生まれたワインは、代々受け継がれていくマルセル・ダイスの伝統的なスタイルとは違い、様々な醸造法を積極的に取り入れた「自由と革新」のワイン。その斬新なスタイルを是非体感してくださいね!
※ヴィニョブル・デュ・レヴールのワインはガラス栓です。キャップシールを剥がし、両手の親指を掛けて上に持ち上げ、反対側も同様にすると、簡単に抜栓することができます。